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潮と葡萄

パレルモからバスに揺られて3時間

小ぢんまりとして可愛らしい
シチリア島西海岸の港町マルサラへ。

ここマルサラは
言わずと知れたマルサラワインの産地で
町を歩けばマルサラワイン・グラス売りの文字が目に入り
食後には自然とマルサラワインが勧められる。


そしてシチリア随一の(だと僕は思う)ワインを産出する
憧れのドンナフガータがワイナリーを構えるこの地。

ドンナフガータ=逃げた女
ナポレオンの攻撃により陥落した当時のナポリ王国。
その王妃が身を置いたのが
現在ドンナフガータ社が葡萄畑を持つ
パレルモ南部のコンテッサ・エンテリーナという土地だったという。

質が高い個性溢れるワインを醸造し
可愛くてお洒落な
エチケットにはファンも多いらしい。
僕もシンガポールのレストランでは3種ほどワインリストに載せていた。
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そんなドンナフガータ社で
マーケティングの職に就く友人ジュリアとは
1年ほど前にマーケティングで訪れていたシンガポールで出会った。

ここマルサラで1年ぶりの再会か、と思いきや
文字通り世界を飛び回るジュリア。
僕がマルサラに着いたその日
彼女はインドでの仕事を終え
シンガポールに到着していたのだ。

もちろん予めメールのやり取りはしていたから知ってはいたのだが
ドンナフガータの門の前に立ってみれば
それはそれは、とても不思議な気分。

今頃、ジュリアはシンガポールでディエゴ(同郷の出身で仲がよい)とジョバンニ(共通の友人)と
ドンナフガータのワインを飲んでいるのかもなぁ。
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この旅始まって以来何度口にしたことか。
世界のどこかで会おう、
そう交わすメッセージはとても現実味があるもの。


潮の香りと葡萄の薫りが鼻をかすめる。

マルサラでシンガポールを想う。

みんな元気かな。

2011年10月
マルサラより
# by kentaro_torii | 2011-10-25 23:59 | イタリアより

パレルモにて思う

一人の時間が長くなると
会話の相手は自分自身になり
いつの間にやら
過去、現在、未来と
それぞれの自分同士を比べることになる。

そして
自分の欠点や弱点が見えはじめ
それを改善し表現する場を欲し
ただ、
働きたいという思いが募り始めている。

こんなにも
自らが生むモチベーションに溢れたことは今まであったかな。

この思いをいっぱいに溜め込んだら
ちょっと良い仕事ができそうだ。

それまで旅を続けようと思う。

2011年10月24日
パレルモより
# by kentaro_torii | 2011-10-24 23:59 | イタリアより

地中海の交差点

ローマからシチリア第一の都市パレルモへ。


地中海の交差点 シチリア

地中海の覇権を争った各国にとって
重要な地に位置するため
紀元前の古代ギリシャ以来、多くの国がこの地の征服を企てた。

次々と換わる統治国。

シチリアといえば連想されるのがマフィアだが
そのマフィアも外国に統治・圧政されたシチリア人の
反発と抵抗がその誕生の下地になったといわれる。

一方で
新たにもたらされる文化と既存の文化の融合は
独特でエスニックな香りが漂う
シチリア文化を生み出した。

ギリシャ、ローマ、フランス、スペイン、アラブ、ノルウェー、アフリカ
ここまで多種多様の文化が織り交じった地など
他にはなかなか見当たらないだろう。

ここはイタリアであってイタリアでない。
そんな島なのだ。
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人種の坩堝、文化の坩堝。
僕は昔からそんな土地に憧れる。

その地の空気がもたらす
この世界に生きているという実感と
日本人であるという実感。

十人十色。
彼らの文化と世界観にそっと触れてみる。

そんな折、
心のどこかに生まれる
自らのアイデンティティー。

そして
美しい日本を想い
日本人でよかったと
心から思うのだ。
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2011年10月22日
パレルモより
# by kentaro_torii | 2011-10-22 23:59 | イタリアより

旅の1コマ 3

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コートダジュールの光
2011年10月8日
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シャガール・ブルー
2011年10月9日
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国境の町
2011年10月12日
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ブリュッセルの朝
2011年10月15日
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エッフェル 人々の想い
2011年10月17日
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秋の香り ローマ
2011年10月20日
# by kentaro_torii | 2011-10-22 00:00 | 旅の1コマ

おいしい人

上品で可愛らしいアンドレアのマンマは料理が得意とのことで
料理教室を兼ねたプランツォを3度と
夜遊びにでかける僕たちの為に夜食まで用意してくれた。
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初日のローマ料理フルコース~
前菜各種
ブカティーニ・アマトリチャーナ
プンタレッラのサラダ
仔牛のサルティンボッカ
ブルーベリーのクロスタータ
からはじまり

大好きだというシチリア風ピスタチオとアーモンドペストとドライトマトのパスタ
モッツァレッラを詰めたズッキーニの花のフリット
アンドレアの小さい頃からの大好物だという生地から作るパンツァロッティと
数々の手料理を披露してくれた。
仕込み~仕上げと調理は驚くほど手際よく
質問すれば丁寧に答えてくれ
手伝っていて楽しい。
そして
もちろん美味しい。
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アンドレアの実家周辺は
ローマのチェントロからわずか15分という距離なのだが
仔羊の群れに遭遇することもあり
草と羊の匂いが鼻をかすめる。
羊乳でつくる硬質チーズ、ローマ原産のペコリーノ・ロマーノや
(ローマ料理の代名詞であるアマトリチャーナやカルボナーラに使用する)
ローマ料理によく使用されるアバッキオ(7kg以下の仔羊)の存在を肌で感じた。


こうして
積み重ねた経験や体験・味・思い出と
何をするにしてもベースとなる伝統料理と地方料理。

それを
自分の料理感とフィルターを通して作り上げる自然体の料理。
それが僕の目指す料理であって
そこに日本的な要素やタッチが加わるのは
フュージョンなどというものではなく
当然の結果なのだと思う。

だって、
生まれてから20年間暮らした日本。
いつも身近にあった
日本の四季、母親の手料理、日本料理の調理法、日本の食材。
それを抑えろといわれるのは無理がある。
むしろ
そこから自分というアイデンティティーを持った
オリジナルの料理が生まれるのではないかな。

誰もしたことのない驚きの組み合わせや
科学的な調理法などいらない。
新しい料理なんてそうそう作れるとは思っていない。

僕は料理に関しては自分自身の表現者でありたいと思っている。
だから料理、文化、歴史、社会的問題と、幅広い知識を持った人である必要があり
美味しい人でなければならない。

そしてレストランの空間と
お客様ひとりひとりの素敵な時間の為の
クリエーターでありたい。
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と、ここまで綴っていて
昔、あるお世話になった方から頂いたお言葉を思い出し昔のメールを検索してみた。

よい料理人は皿の上が見事なばかりではなく、自分自身もおいしい人である。
人のおいしさには年齢は関係ない、自然の美しさと人のよき心を愛するものはおいしくなる。とは思わないですか。
おいしいものを沢山食べさせてくれて有難う。
またどこかで君の逸品の皿にお目にかかることを楽しみにしています。


サイパンを離れシンガポールに移る時期であったから
若干24歳であった僕に贈ってくれたメッセージであり
当時はきっと
その意味の半分も理解できていなかったのでしょう。

5年もかかりましたが
今、やっとその真意を掴みかけている自分がいます。

2011年10月21日
ローマより
# by kentaro_torii | 2011-10-21 23:59 | イタリアより