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ローマの風 石畳の下

パリからローマへ。

シンガポール以来の友人
現在、香港でワイン関係の仕事に就くローマ出身のアンドレアが帰省中。
ローマの実家に2泊お世話になる。

育ちの良さを感じさせる綺麗なイタリア語を喋り
英語、スペイン語、ポルトガル語も操る
日本のアニメが大好きな
まるで貴公子の様な風貌をしたアンドレアは
生粋のローマ人。

家を出て
スクーターに二人乗り。
アッピア街道を下り
アウレリアヌス帝の壁を抜け
たどり着いたコロッセオ。
ナヴォーナ広場を横目に
裏道を走りぬけ
スペイン広場に到着する。
ローマの風 石畳の下_a0230922_22115722.jpg
すべての道はローマに通ず。
この格言は
現在のヨーロッパ全土、トルコ、北アフリカさえも領地にしたローマ帝国が
ローマを起点にに各地に設置した発達した道路網から生まれたもので
その道は都市からのローマへの上京はもちろん
商いの道
そして敵国からの攻撃に対してローマから防衛のために各都市へ赴く
軍隊の為の最短ルートとして利用されたという。

皇帝、元首、商人、騎士、奴隷、僧侶
人の数だけ想いがあり
みな、その想いを胸に大帝国ローマを目指したのだ。

今回、僕にとっては4度目のローマ滞在なのだが
そんなことを想ってみたら
この時
始めてローマの風を感じ
スクーターの後ろで
一人わくわくしている自分がいた。
ローマの風 石畳の下_a0230922_22185894.jpg
2日目朝、大雨が降った。
ローマの街はまるで洪水が起こったかのごとく
地下鉄は止まり
膝の高さまで水が溜まる地域も。

2000年前の排水設備を利用してるからたまに起こるという
壮大なスケールの話をアンドレアから聞くがそれも納得。

なぜなら
新しい排水設備の設置なんて到底難しいのだろうと思う。
地下を掘れば何かしらの遺跡にぶつかってしまうらしく
地下鉄の工事すらもなかなか進まないという話を聞いたことがある。


この石畳の下には歴史が眠っているのだ。
ローマの風 石畳の下_a0230922_22125075.jpg
歴史と共存する街ローマ。
ここにいるだけで
この壮大な歴史の延長線上を生きていると感じる。


日本から持参した5冊の小説文庫本。
読書が大好きな自分なのだが
驚くことにまだ一冊も読み終えていない。

今こうして
自分という物語を生きている僕には
活字を欲することが少ない様だ。

2011年10月20日
ローマより
# by kentaro_torii | 2011-10-20 23:59 | イタリアより

美しい時間

ブリュッセル・ミディ駅より1時間、パリへ。

8年ぶりのパリ。
あの頃は僕はイタリア、姉がパリに住んでいたため
お互い2度づつ(姉は当時僕が住んでいたフィレンツェとミラノに)遊びに行き来した訳だが
偶然とはいえ実に国際的な姉弟であった。

当時、僕は仕事と仕事の合間の期間ということもあり
姉の友人の家に2週間ほど滞在することができたのだが
あの時間は
その後の自分の美意識や感性に大きな影響を与えたのかななんて
ふと思うことがある。

21歳の青年にとってパリの街は
刺激的で
ただただ美しかった。
美しい時間_a0230922_0551026.jpg
今回のパリ滞在の目的は2つ。
1つ目は
3つ星レストラン、アルページュでのランチ。
炎の魔術師などと呼ばれ
フランス料理界でもいち早く野菜中心の料理を提案してきた
現在の料理界の風潮とは一線を画くアラン・パッサールの世界。
何年前だろう、
専門料理という雑誌で氏のオマール海老の料理を見て
強烈なインパクトを受けたのを今でも覚えている。

大地の恵みと土の味。
素材の味を120%に引き出すその技術と
唸るほどに美味しいソースたち。

イタリアから合流予定の友人が来れなくなり
一人ランチとなった訳だが
このレベルのレストランはサービススタッフの配慮が嬉しい。
退屈を感じさせることのない
さり気ない気遣いと
心地よいタイミングで始まるその会話は
流石の一言につきる。

値段も流石に一流であったが・・



2つ目はシンガポール以来の友人である
Hirokiさんがシェフを務めるレストランSolaでのディナー。

レストランは5区、シテ島の近くの小道を入ると姿を見せ
その店内は日本人の僕にとってどこか懐かしい佇まい。
ディナーは強気で自信の表れを感じさせる2種のおまかせコースのみ。
この設定はシェフにとっての理想系だが
特にアラカルトを選ぶのが好きな欧米人が多い海外では
なかなか難しい現実もあるものだ。

お客さんは地元の、きっと食通であるような人ばかり。
フュージョンなんて呼ぶにはおこがましい
高い地点での和のテイストとフレンチの融合。

そして、
緩急をつけた、'わびさび'のある料理。
これは僕にとっての料理をする上での目標のひとつで
以前、あるお客さんにこの言葉を頂いて素直に感激した思い出がある。
最大のほめ言葉だと思う。

僕より2つ年上、
同年代である彼とパティシエのHironobuさん。
シンガポールを飛び出し
パリという世界を代表する食の街を舞台に活躍する二人の姿は
眩しくて格好良かった
(僕は普段はこんな言葉はあまり使わない)

僕はこの日、
旅を始めて以来一番の刺激を受け
それと同時に
これを境に自分の進路を正面から真剣に見据えるようになった。
美しい時間_a0230922_0562277.jpg
ああ、
興奮して眠れない夜はいつ以来だろう。

2011年10月18日
パリより
# by kentaro_torii | 2011-10-18 00:49 | フランスより

ブルージュ

ブルージュ_a0230922_1382178.jpg
どこまでも青い空 秋色の葉
ブルージュ_a0230922_139592.jpg
馬が駆ける石畳 その足音に目を閉じて
ブルージュ_a0230922_1395710.jpg
中世の街並みを 想い 歩き 口に放るチョコレート
ブルージュ_a0230922_1403613.jpg
そこは時が止まってしまった
ブルージュ_a0230922_1414389.jpg
童話の世界
2011年10月15日

ブルージュより
# by kentaro_torii | 2011-10-15 23:59 | ベルギーより

ブリュッセル×ムール貝=シンガポール

ベルギー、ブリュッセルへ。

リヨン経由でパリに入る予定が
見本市が開かれている為かリヨンのホテルが
どこも満室だということに3日前に気づき、
パリに短時間で陸路で入れる都市を中心に格安航空券を探してみたら
ニース-ブリュッセルを見つけたのだ。
 ブリュッセル×ムール貝=シンガポール_a0230922_615186.jpg
ベルギー。

チョコレート、ワッフル、ムール貝くらいしか思い浮かぶものがなく
観光の情報も全くなかったのだが・・
‘ベルギーは食のレベルが高いよ。’
食通である知人のひと言が脳裏に浮かび
迷わず選んだ。
(ちなみにパリにTGVで移動するよりも安上がりだった。)


感想はといえば、
美しく、豊かで機能的な街並み。
知人のひと言の通り、何を食べても本当に美味しい。

そして、何よりも印象に残ったのは人々の優しさ。
地図を眺めているだけで
大丈夫?と話しかけてくれる人。
道を尋ねれば理解するまで説明を繰り返してくれて
一緒に近くまで歩いて指し示してくれることもしばしば。
パリジャンの様にスノービッシュな所もなく
イタリアーノの様にどこか適当なところもない。
(僕の個人的な意見です)

ヨーロッパといえばイタリア、スペイン、フランスしか訪れたことのない僕にとって実に新鮮で
同時に、オランダ、ドイツ、オーストリア等にも興味が出てきてしまった。

また、ゆっくりと滞在したいものだ。
 ブリュッセル×ムール貝=シンガポール_a0230922_6154076.jpg
もちろん、
僕もムール貝とフリッツを食べた訳だが
ムール貝といえば思い出される
あのシンガポールでの日々。


それは
2年前のあの頃。
日本料理、イタリア料理、アルゼンチン料理と
3つのレストランのオープニングをほぼ同時期に控え
成り行きで全てに関わっていた僕は
同僚であり日本料理店のシェフである
’のぶさん’と共に、
ああ、これが本当の一生懸命っていう意味なんだろうな
なんて思えてしまう位に朝から晩まで働いた。

次から次へと降りかかる山の様な仕事量。
課題と難題。
週7日、朝の8時から深夜まで。
終業時間という概念はなかった。

それでも時間が足りずに
兎に角がむしゃらに働き、

ようやく仕事が終われば。
終わるのも大概深夜1~2時だったのだが
どれだけ疲れていても毎晩のように2人で飲みに行き、
語り、反省、愚痴、希望、
明日の予定を確認し頭を抱え
そして笑い
また前を向く。

ムール貝を食べ白ワインを煽ったあの時間。

そんな友人は
もはや'戦友'と呼ぶのに相応しく
固い絆で結ばれるもの。


僕は英語で友人や知人に対してちょくちょく使われる
'Brother'という言葉が大嫌いである。
大して仲良くもないのに
'Hey Brother!'なんて言われると寒気すら覚えるくらいだ。

そんな僕が
彼の事は迷うことなく
'Like a Brother'兄弟の様だと表現するくらいなのだから
その位に特別な存在なのだ。
 ブリュッセル×ムール貝=シンガポール_a0230922_616543.jpg
そんな思い出すだけで胸が熱くなるあの日々に
ブリュッセルでムール貝を食べながら
思いふけるだなんて・・

人生面白いものですよ、のぶさん。

2011年10月15日
ブリュッセルより
# by kentaro_torii | 2011-10-14 23:59 | ベルギーより

無花果の薫り

ニース滞在は1週間、
うち、レストランKeisuke Matsushimaのキッチンでの研修は4日ほどであったのだが
松嶋シェフにはたくさんの課外活動(?)に連れて行ってもらった。

ご自宅でのワインからはじまり
買い物へ。
ワイナリーへ。
友人である芸術家のアトリエへ。
ペタンクの大会へ。
市場へ。
チーム・シェフを務める地元のプロサッカーチームOGCニースの練習場へ。。
無花果の薫り_a0230922_5344964.jpg
初日、僕自身の悩みや今後の方向性など
少し打ち明けていたのだが
翌日、
ワイナリーに行くよーと、
ほんの数十分だが
一緒にニースの山を歩いて過ごした
貴重なその時間は。

野生のルコラをつまみ、
無花果の葉の薫りを楽しみ、
木と地に触れ、
自然の尊さを感じ。

忘れかけていたものを思い出し。

新しい発見。

何も難しく考える必要はないということ。

今後の一つの方向性すら指し示してくれた。
無花果の薫り_a0230922_534141.jpg
そして、一緒に過ごす時間の中で生まれる
ひとつひとつの会話の中に
たくさんのヒントとアドバイスが含まれていた気がしてならない。

それは料理に関することだけではなく
それ以上に
もっともっと大切なもの。

敢えて、
何か今の僕に必要なものを伝えようとしてくれていたのか。
それとも、
それが松嶋シェフの自然体であるのか。
今でもそれは分からないが・・・


新しい目標ができた。
まずは、彼に刺激を与えられる様な人間になろう。

自分が今後、
何処の国で仕事をするにしても。
僕の活躍が何処からか彼の耳に届くくらいに
何かしてやろう。と。

目標は大きすぎる位が丁度いい。
公言してしまえばやるしかないのだ。



本当に素晴らしい時間を過ごしました。
また、次の再会の日まで。

2011年10月13日
ニース コートダジュール空港より
# by kentaro_torii | 2011-10-13 23:59 | フランスより