ブリュッセル・ミディ駅より1時間、パリへ。
8年ぶりのパリ。
あの頃は僕はイタリア、姉がパリに住んでいたため
お互い2度づつ(姉は当時僕が住んでいたフィレンツェとミラノに)遊びに行き来した訳だが
偶然とはいえ実に国際的な姉弟であった。
当時、僕は仕事と仕事の合間の期間ということもあり
姉の友人の家に2週間ほど滞在することができたのだが
あの時間は
その後の自分の美意識や感性に大きな影響を与えたのかななんて
ふと思うことがある。
21歳の青年にとってパリの街は
刺激的で
ただただ美しかった。
今回のパリ滞在の目的は2つ。
1つ目は
3つ星レストラン、アルページュでのランチ。
炎の魔術師などと呼ばれ
フランス料理界でもいち早く野菜中心の料理を提案してきた
現在の料理界の風潮とは一線を画くアラン・パッサールの世界。
何年前だろう、
専門料理という雑誌で氏のオマール海老の料理を見て
強烈なインパクトを受けたのを今でも覚えている。
大地の恵みと土の味。
素材の味を120%に引き出すその技術と
唸るほどに美味しいソースたち。
イタリアから合流予定の友人が来れなくなり
一人ランチとなった訳だが
このレベルのレストランはサービススタッフの配慮が嬉しい。
退屈を感じさせることのない
さり気ない気遣いと
心地よいタイミングで始まるその会話は
流石の一言につきる。
値段も流石に一流であったが・・
2つ目はシンガポール以来の友人である
Hirokiさんがシェフを務めるレストランSolaでのディナー。
レストランは5区、シテ島の近くの小道を入ると姿を見せ
その店内は日本人の僕にとってどこか懐かしい佇まい。
ディナーは強気で自信の表れを感じさせる2種のおまかせコースのみ。
この設定はシェフにとっての理想系だが
特にアラカルトを選ぶのが好きな欧米人が多い海外では
なかなか難しい現実もあるものだ。
お客さんは地元の、きっと食通であるような人ばかり。
フュージョンなんて呼ぶにはおこがましい
高い地点での和のテイストとフレンチの融合。
そして、
緩急をつけた、'わびさび'のある料理。
これは僕にとっての料理をする上での目標のひとつで
以前、あるお客さんにこの言葉を頂いて素直に感激した思い出がある。
最大のほめ言葉だと思う。
僕より2つ年上、
同年代である彼とパティシエのHironobuさん。
シンガポールを飛び出し
パリという世界を代表する食の街を舞台に活躍する二人の姿は
眩しくて格好良かった
(僕は普段はこんな言葉はあまり使わない)
僕はこの日、
旅を始めて以来一番の刺激を受け
それと同時に
これを境に自分の進路を正面から真剣に見据えるようになった。
ああ、
興奮して眠れない夜はいつ以来だろう。
2011年10月18日
パリより