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リド島にて

8年前、
僕が働いていたサルデーニャのリストランテでシェフを務めていたアントニーノ・サンナ。
現在、ヴェネツィア・リド島のリゾートホテルにて
エグゼクティブシェフの職に就いている。

ヴェネツィアはヴィチェンツァから列車で1時間弱、
このチャンスは逃すまいと
僕は1泊2日でヴェネツィアを訪れた。

シェフ・アントニーノには本当に多くのことを学び
かわいがってもらい
そして料理の面だけではなく
今、僕がこうして僕である所以の
人間性の面でも多大な影響を受けたと言えるであろう。


シェフの料理は
フランス仕込みの繊細な仕事と美しい盛り付けの中にある
輪郭のハッキリとしたパンチの効いた味付け。
そのひと皿ひと皿は
21歳の少年には
衝撃的で官能的でさえあった。

8年の歳月が経った今も
色褪せることなど全くなく
表現方法は違うとはいえ
僕は今だってそんな料理がつくりたいと思っている。

そして
声を荒げることはなく
どんな時でも各スタッフに的確な指示を与え
真面目で温厚な性格。
正に理想のシェフ像だ。


そんなシェフとの7年ぶりの再会。
ロバート・デ・ニーロの映画 にも使われたというホテル内を案内してもらい
プロセッコで再会を祝して乾杯。
8年分の積もる話をお供に美しいビーチを目の前に
柔らかな空気に包まれた
至福のランチを楽しんだ。
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話題の一つ一つが
昔とは違ったものになっているのが
自然で、また心地よい。

イタリア各地の食材とワインの話から
スタッフの構成、組織化、マネージング。
オペレーションに対しての妥協や葛藤など
シェフ対シェフとして同等のレベルで話ができているのだ。

シェフ・アントニーノに追いついたなどということは決してなく
まだまだ大きな差が存在するのは
自分が一番理解している。

ただ、
僕のここ数年の努力は多少は実りのあるものであったのだと
実感することができたのは確かで
僕は本来、なかなか自分に納得をする性格ではないのだが
この瞬間は自らの歩みに少しだけ満足をしている自分がいた。




異国でイタリア料理を普及する仕事にも興味があるという
シェフ・アントニーノ。

世界のどこかでまた会おうという
別れ際の約束は
とても現実味のある力強い響きだった。
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2011年10月2日
ヴェネツィアより
# by kentaro_torii | 2011-10-02 23:59 | イタリアより

ヴェローナにて

イタリアへ旅立ったのは20才の誕生日の1ヶ月後。
当時パリに住んでいた姉とその友人に祝ってもらった21歳の誕生日。
その後、サイパン、シンガポール、アルゼンチン行きの飛行機の中と
世界各地で迎えてきた20代の誕生日。

1年1年
幸せのいっぱい詰まった
素晴らしい記憶と思い出は
決して忘れることのない
タカラモノだ。


そして、
ヴェローナへの日帰り旅行で迎えた20代最後の誕生日。

世界中の友人・知人から
たくさんのお祝いメッセージを頂き
大切な人から祝福の電話をもらい
心が温かく
幸せいっぱいで
こんな誕生日もいいな~なんて
ほのぼのとしていたのだが

カフェで手紙を綴っている時に僕はふと思った。

誕生日とは
祝ってもらうと同時に、
それ以上に
‘感謝する日’
なのではないかな、と。

産み育ててくれた両親
まわりで見守ってきてくれた人たち
大切な友人
恩師
そして愛する人

すべての人に感謝の気持ちを捧げる。
そんな日が一年に一回あってもいいかもしれない。


なんて、
楽しくて充実した日々を送っているからこそ
生まれる心の余裕がそう思わせているのか。。
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というわけで
無事、29歳になりました。

30歳の誕生日は
どこで乾杯するのかな。

2011年9月25日
ヴェローナより
# by kentaro_torii | 2011-09-25 23:59 | イタリアより

手紙の書き方

ここ北イタリアの田舎町でうれしいお知らせを続けて2通受け取りました。

1、自分の進む道を決めた友人
今年の8月に東京で再会した時は今後何をしてゆくかまだ悶々と悩んでいたのだが
‘けんたろうさんに会って、好きなことを続けながら生き生きしている姿に刺激されて
やっぱり一番好きなことをシンプルに取り組もうと感じたの’
という嬉しいお知らせが。

お茶の活動を軸に
日本文化とアジアの生活の美しさを世に発信してゆきたいとのこと。
僕の生き方がほんの少しでも誰かの背中を押してあげることができるなら
こんなに幸せなことはありません。
芯とパッションをもった人なので今後が楽しみです。


2、大好きなバンコクでホテル業務にチャレンジすると決めた友人
同じく今年の8月に東京で久々の再会をしたのだが
その時は長年働いた職を離れたばかりで
まだ吹っ切れていない様子だった。

そして
‘自分がそこで仕事する姿とか、生活してる感じが映像で浮かんで見えて
コレは呼んでもらってるのかな、おいでってことなのかな、なんて思いながら
挑戦してみたら、お仕事させてもらえることになったよ。’
という素敵なお知らせが。
アジア随一のパワー溢れるバンコクという都市で
さらに自分を磨き、いっそう素敵な女性になってください。


2人とも僕と同年代の女性なのだけれど
世界で活躍する二人の姿が想像できるよ。

応援しています。
そして、次回の再会を楽しみにしています。



以前、フェイスブックとブログ上で
‘シンガポールからの手紙’ と題して海外で働く日本人として
僕の思いを綴ったことがあり
そしてたくさんの賛同と意見を頂いた。

今だって自分自身の生き方の指針になるものでもあり
今後も悩みや迷いが生じたときには
ここに戻ってくればいいと信じている。


‘手紙’を書くというのは
心の奥底に潜んでいる思い・想いを
自分自身に対して打ち明ける行為でもあるのではないかな。

それはきっと手紙の受取人の存在がそうさせるのだろう。

大切な人、大好きな人、尊敬する人、苦手な人、愛する人・・


僕のこの‘シンガポールからの手紙’も
ある一人の受取人がいたから書き上げることができた訳で、
その人は僕よりずっと遠いところを走り続けてきた
僕が目標とする憧れの人物だ。


その人のことはまた後々記したいと思う。

2011年9月21日
マラーノ・ヴィチェンティーノより
# by kentaro_torii | 2011-09-21 23:59 | イタリアより

木と水

ここマラーノ・ヴィチェンティーノのリストランテでの研修に入り
早くも一週間が過ぎた。
刺激的で充実した日々を送っています。


僕は運よく22歳でサイパンの高級リゾートホテル内イタリアンレストランのシェフを任されトップとして仕事をしてきた。
(よく英語圏の国ではシェフ=料理人とみなされていることが多く、誰もかしこもシェフを自称しているが、本来の意味は仏語でシェフ=チーフ。一番上の立場の人間を指す)


今思えばあの若さと経験で
よくやった。
いや、
よく任せてもらえたな・・なんて思ってしまうのだが、
その後、シンガポールの2件のレストランでも同様だったため
1日の半分はペーパーワークに費やすという日々をもう7年近く送ってきたことになる。
シェフというのは料理だけをしていれば良いという訳では当然ないのだ。


それは何ものにも変えがたい価値ある貴重な経験であり
だからこそ 今日の僕がある訳だが
やはり調理の技術的なものは他の同年代のシェフには劣るだろうと自覚している。

それは経験と費やした時間に比例するものなので
その差を埋めるのは難しいだろう。
経験から生まれる引き出しの多さも
僕に欠けているものの一つかもしれない。


そんな思いもあって
全く環境の違うレストランで
研修をしたいという思いは常にもち続けていた。

現在、朝の8時から夜中までキッチンで仕事をする毎日なのだが、
まったく苦ではなくむしろ心地よい疲労感さえ覚えている。

黙々とトルテッリを包んだり
鹿の背肉を10頭分まとめてさばいたり
野菜の下処理をしたり
新鮮で楽しいものだ。


トップに立つということは下のスタッフにものを教える立場にあるということ。
技術を教え、知識を与え、成長を見守るのも
とても楽しく幸せを感じる瞬間ではあるのだが
僕はここ数年、自分自身が単純に学ぶ・習うという事に渇望さえ感じていた。


見て聞いて食べて覚える。
シェフのコピーとなる。
新しい知識を取り込む。


世界各地のレストランで研修をするという今回の旅は
僕を大きく大きく成長させてくれるのではないかな。
普通の何倍ものスピードで。
与えられた水を瞬時に吸収する
乾いた土に立つ木の様に・・



渇望とは最大のモチベーションである。

2011年9月17日
マラーノ・ヴィチェンティーノより
# by kentaro_torii | 2011-09-17 23:59 | イタリアより

旅の1コマ 1

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シンガポール出発
2011年9月2日
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ドーハ空港にて 外は灼熱の太陽
2011年9月3日
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雨降りのガレリア ミラノ
2011年9月4日
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雨上がりのドゥオモ ミラノ
2011年9月4日
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サン・フェリチェ 朝霧の風景
2011年9月7日
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ヴァルポリチェッラの葡萄
2011年9月8日
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コマッキオ ジェラートカー
2011年9月9日
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ディエゴ家 自家製バルサミコ
2011年9月10日
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ヴィチェンツァ 日を浴びるキリスト
2011年9月11日
# by kentaro_torii | 2011-09-14 23:59 | 旅の1コマ